素浪人の生存報告

　近江のIさんと行く方向は同じものの、私は目の前に立ちはだかる標高350mの峠を避けるべく、船で半島へ向かう。半島にも峠はあるが、そちらは標高100mなので、250m楽をできる。

　Iさんと別れ、8時の船で半島の須賀利地区へ。人間＋自転車で950円。金で楽を買うのだ。



　須賀利は昭和50年代まで陸路がなく、本物の「陸の孤島」だったらしい。海沿いにぎゅっと集落が詰まっている。
　江戸時代は風待ち港だったらしいが、今はおそらく子供が1人もいない高齢の村…。でも港が広く、山の木も手入れされていて良い雰囲気だ。

　須賀利からの峠は、まあまあの登りだが、350mよりはまし…かと思いきや、峠を下った後はずっとアップダウンだった。ああ…
　国道へ復帰したら、近江のIさんとばったり再会。まあ、会うかもしれないと思ってはいたが。

　その後、Iさんと共に数10km続くアップダウンを進んだ。アップダウンに終わりがなかったなあ…。紀伊半島はきつい！
　松阪牛が有名な松阪市の手前まで漕いで温泉に入り、マックスバリュー(またイオングループ…)で晩御飯を食べ、芝生が綺麗なスポーツ公園で野営。
　テントを張るのは、野球とテニスとフットサルの利用が終わる22時まで待った。フットサルをしていたのはおそらくブラジル人だった。ここはシャープの工場がある企業城下町。道が綺麗なのも、ニュータウンが整備されているのも、シャープ様の力だろう。


走行距離:93km
朝食:カロリーメイト4本、バナナ2本
おやつ:ポテトチップス
昼食:チキンライス&焼きそば弁当
おやつ:ソフトクリーム2本(おいしくておかわりした)、ゆで卵
夕食:かに玉ご飯、冷奴400g、金ちゃんきつねうどん、メンチカツ、コロッケ、ウインナー、野菜ジュース

　寝不足だが一応眠れた。7時20分頃出発。
　今朝はカロリーメイトじゃなくて牛丼を食べようと思って、朝食をとらずにちょっと先の新宮市まで漕いだら、無事すき家があって牛丼にありつけた。クソしょっぱかったが、まあ塩分不足の今の私には良いだろう。

　新宮市を出たら、私にとって最後の未踏の都道府県、三重へ突入。これで47都道府県全てを訪れたことになったぞヾ(＠’◎‘＠)ノ
　スカっと晴れて空も海も綺麗で、三重県が映える。国宝も世界遺産もあちこちにあるし、ええとこですのう。

　でも、峠はきついですのう…。たかだか350mだげど、峠慣れしていない今の私にはきつい。汗だくだく頭フラフラ。
　道の駅で3時間くらい休憩してから、「トラック死ね」なトンネル2つ抜けて、尾鷲(おわせ)市へ。疲れたのでここで何とか寝床を探す。
　神社に行ったりぶらぶらしたが、良い所が見つからないので、地図上の情報を頼りに現在地から少し離れた所を最終候補地を決め、買い出しをしようとスーパーへ向かっていたら、後ろから「すみません」と声をかけられた。振り返るとチャリダー。わあい。

　滋賀県から紀伊半島一周の旅に来ているIさん(以下、近江のIさん)と私の最終候補地へ向かった。熊野古道センター。だだっぴろい駐車場と広い芝生を持つ、世界遺産マネーで出来た箱物だった。野営地として、ばっちり！
　Iさんと箱物の横にある温泉に入り、野営地にテントを張り、語り合った。やっぱり現代日本について。Iさんとは同い年なので話が合った。若者は「金・物=幸せ」とは考えとらんし、社会が若者を家畜化していることに気付いている。

　13時出発☆昨日雨で荷物が濡れたけん、仕方ないんだす。僕がとろいんじゃないんだす。
　荷物を雨から守るためのゴミ袋や荷台をきびる為のロープを買い、いらん荷物を郵便局から実家へ送り、体制を整えられたけん、良かった。


　アップダウンの連続はなくなり、軽快に漕いでいたら雨が降ってきた。なんなんすか。ザバーっと降って来たよ。
　スーパーで2時間雨宿りしてたら、地元のお爺さんが話しかけてきた。お爺さんによると、この辺は日本一雨の多い地方らしい。なんということだ。この私が雨嫌いとしっての狼藉か。とんでもない所に最悪の時期に来てしまったのか。

　ちょっと止んだ所を見はからって出発。が、またすぐに降ってきた。2時間雨宿りした意味がなか。
　まあ、ちょくちょく雨宿りしながら那智勝浦の道の駅(鉄道駅と温泉と産直市がくっついてる)に着いた。
　温泉に入り、休憩所で休み、軒下にテントを張っておやすみなさい。


走行距離:34km
朝食:ペヤングソース焼きそば超大盛、バナナ2本、冷奴200g
昼食:ミニビーフコロッケ5個、おにぎり1個
夕食:カロリーメイト4本、バナナ1本

　昨晩、寝る前にコーヒーを飲んだせいか、殆ど眠れなんだ。しまったな。自分が繊細な人間であることを忘れていた。
　なれど、5時5分起床、6時20分出発！僕はやればできる子。普段はやる気がないだけで…

　田辺市の隣町、あの有名な白浜へ寄ってあげた。でも全然大したことなかった。
典型的な昭和の団体観光全盛時代の温泉街で、観光地に対してごちゃごちゃ小うるさい私から見ると非常にセンスがない。「白浜」っつったって、猫の額程の砂浜があるだけじゃし。写真撮る気にもならんかったわ。


　ちゃりりーんとアップダウン道路を漕ぎ、「イノブータランドすさみ」という道の駅で休憩しとったら雨が降ってきやがった。天気予報では全然そげんこといっとらんかったぞ。馬鹿！

　雨の時は漕がないと頑なに決めているので、そのまま休憩を延長して雨宿りしていたら、カブで日本一周している金沢出身のおじさんと会った。
　おじさんは9年前にもカブで日本一周しており、その時と比べると今年は若者の旅人が全然おらんらしい。やっぱりね。歩きお遍路も60歳以上の人ばっかりだったしな。
　「若者こそ旅に出るべき」と、おじさんと意見が一致した。おじさんも20歳の頃に歩いて金沢から太平洋側まで横断したらしいのだが、その時色々な人に親切にしてもらって、「根っからの悪い人はいないのだな」と確信したのだそうな。その経験は、後々仕事に活きたそうだ。おじさんは「もし自分が社長だったら若い社員に2ヶ月休暇を与えて、旅をさせる。それは絶対に会社の為になると思う」と言っていた。

　雨が止んでから出発したが、やがて降ってきた。カッパを着たが、結局は汗でずぶ濡れになるから意味がなかった。雨は本当に嫌だ嫌だ嫌だ。タイヤは重くなるし荷物は濡れるし…。おまけにここはアップダウン。ただ辛い。昨日に引き続き、何でこんなに辛い思いをしなきゃいけないんだと思ったが、自分が選んだ道なんだよな…。

　あてにしていた宿は潰れており(それか夏休みシーズンまで休業か)、嫌々10km先の素泊まり3500円の宿まで進んだ。頑張った。
　そこのフロントに声を掛けたら、「周りに店があって便利で安い宿がこの先にあるから、濡れついでにあとちょっと頑張りな」と親切に教えてくれた。なんて商売っ気がないんだろう。

　この商売っ気のない親切なお宿の前で、去年知床でお世話になった東京のNさんと再会した。たまたま和歌山をご旅行中ということで、今日一目会いましょうと電話を下さったのだ。
　Nさんと、お連れのお母様などからお菓子やジュースなど色々頂いた。Nさんとは、横浜でまた再会できるかな？


　Nさんと話しているうちに雨も止み、便利で安い「民宿くしもと」のある串本町中心街までのんびり行けた。
　民宿くしもとは最高だった。洗濯機無料、テレビはアクオス、部屋に1台ノートパソコン、外の天然温泉入浴券付きで2900円。一日の終わり良ければ全て良し！
　久し振りに垂れ流し温泉に入れた。昨年12月の別府以来かな？気持ちよかった〜。やっぱり温泉はよか！


　が、財政が逼迫していることが今日金をおろして発覚したので、明日からは0円宿泊で…。最近宿に泊まってばかりで、旅人として堕落してたからな。
　あと6万円以内に抑えて埼玉へ戻りたい。もう各地域の名物食べられない…


走行距離:83km
朝食:カロリーメイト4本、バナナ2本、トマトジュース
昼食:カロリーメイト4本
おやつ:イノブタジャーキー(金沢おじさんがくれた)
夕食:赤いきつね、バナナ2本、冷奴200g

　昨日食べたシャーベット？ジェラート？があまりにもおいしかったもので、今朝も食べてから湯浅町を10時頃出発。
　顔や首や胸の肌が、自分の汗で出た塩にまけてピリピリする。海に入った時と同じだ。ほんと、体が繊細なんすよねえ。海水浴できんわ。プールの塩素も良くないし、泳ぐなら川やな。


　さて、紀伊半島に来たことを後悔した。予想してはいたことだが、アップダウンが酷い。平地がない！陽射しが強い。汗だく。めまい。おまけに、歯ぎしりのし過ぎ原因の歯痛が頭痛に繋がっとる。
　明日からは朝早く出て、昼間はこがないようにしようと反省した。昼間の紀伊半島を漕いでいたら、そのうち倒れる。

　梅干しと栄養ドリンクを腹に納めてもバテた感じは収まらなかったが、コンビニで買ったスライスレモン付きのかき氷のレモンをかじったら、楽になった。レモンの威力恐るべし。
　でもこのレモンはきっとメキシコかアメリカ産で、農薬使いまくりなんだろうなぁ。刹那的には体に良いけど、長い目で見たらきっと悪い。

　宿は、田辺市のゲストハウスに入った。
　塩分補給の為にチキンラーメンを食べてつゆも全部飲んだが、まだ塩分が足りてなさそう。


走行距離:81.8km
朝食:カロリーメイト2本、シャーベットダブル
おやつ:カロリーメイト2本
昼食:おにぎり1個、フライドチキン
夕食:チキンラーメン、フライドチキン、トマトジュース、冷奴550g、バナナ2本