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素浪人の生存報告

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5月26日 悔恨

 昨日乗せてくれた人に電話。歩き遍路本多は死にました。
 高知市までの遍路で、満足した感がある。新たな出会いも再会も楽しかったからなぁ。
 「修行の道場・土佐」に入り、あちこち足を傷めて弱気になり、お四国を歩き切ることを諦め、車に乗せてもらうようになり、今は倦怠感がある。

 さて、乗せてくれた方だが、不思議なお話をしてくれた。
 この方はかつて、生まれて5ヶ月の娘さん(次女)を亡くしているそうなのだが、その後、袈裟姿のお遍路さんがやってきて、お遍路が一般的に使う納め札ではなく、何故か鬼子母神のお札を置いて行ったらしい。そして、そのお札はいつの間にか消えてしまったと…。袈裟お遍路さんには、なにかが見えとったっちゃろか?
 また、別の日にお寺に行ったら、住職が「あなた、長女にお数珠を持たせたほうがいいですよ」と、無料で数珠をくれたらしい。その数珠は、家では他の数珠と一緒にしまっとったらしいっちゃけど、やはりいつの間にかそのお数珠だけ消えてしまったと…。住職には、なんか見えとんしゃったっちゃろか…?
 てな不思議なお話でした。う~む。私はお遍路に出るまで、「この世にゃ神も仏もねがんす」と思っとったばってん、お四国を回っとると、「何か不思議な力があるっちゃね…」と変わってきたったい。お四国には、何かあるっちゃ。


 乗せてくれた人は、延光寺の次の観自在寺まで乗せてくれるとおっしゃっとったけんど、私が延光寺をお参りしている間に、病院から呼び出しがあり(看護婦さんだった)、戻らねばならなくなった。そこで、お寺の駐車場で隣に停まった車の人に、私を観自在寺まで乗せてくれるよう頼んでくんしゃっとった。申し訳ない…
 乗せてくれた人には住所と名前を教えて頂いたので、結願(けちがん…88ヵ所回り切ること)したらお手紙を出す。

 お荷物浪人を引き継いで下さったのは大分県宇佐市から区切り打ちに来ているご夫婦だった。宇佐は昨年自転車で通った。日本中旅すると、日本中の人と話が出来てよかね。
 ご夫婦にはお昼ご飯までご馳走になってしまった。人のお世話になりすぎて心苦しい。


 今晩は観自在寺の通夜堂に泊めて頂く。
 通夜堂には、「野宿野郎」という同人誌があり、それにお遍路日記が載っていた。私より遥かにお接待を受けまくって、心がつぶれそうになっている男性の日記と、お接待をあっけらかんと受けたりトイレで寝たりしている神経がぶっとい女性の日記だった。とても慰めになった。

 しかし、今まで自分が車に乗せてもらった距離を計算したら250kmにものぼっていることが判明して、胸の中に葛藤が沸き起こった。自分が歩きにかなりこだわっていたことを初めて知った。車で過ぎた道へ戻って歩き直したいとすら思った。
 ばってん、この足と財力で歩き通すことは無理だ。例えば、歩く距離を1日10kmに抑えたら足はもつだろうが、金がもたん。
 いつかまた徒歩のみで回りに来たい…。

 この葛藤を飲み込むことが、私にとっての「修行の道場・土佐」なのだろう。

この記事へのコメント

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正当な遍路とは

以下,Y君より預かったコメントです。

そもそも「正当な遍路」とは何か。四国遍路は徒歩貫徹しなくてはならないと,いったい誰が決めたのか。空海は本当に全札所を建立したのか。

仮に貴殿がそれを途中で断念したところで,貴殿は誰からも非難されまい。徒歩で四国一周するよりも,自転車で日本一周する方が遥かに立派ではないか。それでも貴殿は今もなお葛藤に苦しんでいるように察する。以下,四国遍路の研究をもとに,友人として助言したい。これが貴殿の前進に少しでも貢献できれば幸いに思う。
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(徒歩=苦行?)
貴殿のように,徒歩に拘泥したり,徒歩を意識する巡礼者は,高度成長期以降に急増する。なぜなら交通機関の発達に伴い苦行的側面が軽減されたからだ。しかし実は,近世にも全札所間の徒歩貫徹を果たしていない巡礼者が確認されている。また近代に至っては,自ら進んでバスや列車,汽船,駕籠を多用した巡礼者が少なからず存在したのも事実だ。

ところで現代社会は,時間などの様々な制約が多いから,徒歩以外に手段の無かった時代に比べれば,かえって徒歩貫徹が難しい時代といえるかもしれない。
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(お接待としての車移動)
巡礼者は所謂お接待を断ってはならぬとされている。しかし乗車したことを悔やまれてしまっては,お接待した側にとっては少し残念かもしれない。

ただ貴殿の場合は,先方からの誘いによる乗車(純粋なお接待)のほかにも,何度も自ら乗車を依頼しており,そこが葛藤を大きくしている一因かもしれない。とはいえ,後者も広義のお接待に含まれると私は思うし,貴殿もそう解釈しておけば,少しは気が楽になるのではないか。
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(巡礼の目的)
巡礼の目的は,宗教・遊興・業務という区別と苦行志向の強弱の別という二つの基準により六つに分類できる。
 -A(宗教的かつ苦行志向強):宗教的な修行
 -B(宗教的かつ苦行志向弱):縁者の回向や自身の極楽往生などのための霊場参詣
 -C(非宗教的かつ苦行志向強):自分探し,心身の鍛錬など
 -D(非宗教的かつ苦行志向弱):遍路に対する憧憬を満たすための遍路
 -E(遊興):観光
 -F(業務):ルポルタージュやガイドブック作成
貴殿はちょうどC・Dの間に位置するのではなかろうか。Dの立場からはCとの間に必ずしも明確な区別がなく,違いは連続的なものとして理解されるかもしれない。しかしCを志向する者はDとの違いを積極的に意識するだろう。

いずれにせよ,貴殿には今一度,貴殿が巡礼する目的について考えてほしい。そうすれば,貴殿の迷いに対する答えが自ずと導き出されるかもしれない。
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* 上記に関連する論文は『徳島地理学会論文集11』に収録されており,徳島県立図書館などで閲覧できます。
  • from 伊本逸志 :
  • 2011/05/28 (21:51) :
  • Edit :
  • Res

ありがとう

今は楽しむようにしてるわ。徒歩
貫徹はまた次回の楽しみにとっておく!
  • from 本多 :
  • 2011/06/03 (18:45) :
  • Edit :
  • Res

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職業:
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