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素浪人の生存報告

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十九日目 5/24 弘前市

 吉野家で朝定食(400円)を食い、金券ショップで高速バスの回数券(2枚綴り9,900円・100円お得)を買い、今夜弘前発・明朝上野着の便を無事予約出来た。今日は弘前観光だ。雨だが…
 
 「虹マート」という、惣菜店や鮮魚店が集まった、市民向けのミニ市場の様な所でイカメンチ(100円)というものを買って食べた。旨かった!お好み焼きから、小麦粉と「焼くこと」を引いて、イカと「揚げること」を足した様な食べ物だ。大きさはコロッケくらい。2,3年前に八戸を訪れたことがあるが、その時も、青森県は安くて旨い食べ物が沢山あるという印象を受けた。実は、青森は隠れ食い倒れ県だろう。

 その後「無添加」「手作り」と看板を出した「三笠屋餅店」に入ってよもぎ餅とあさか餅と羽二重餅を店内で食べた。塩が甘さを引き立てて、うま~い。今まで食べたよもぎ餅(まんじゅう)の中では1番だ。あんこも自家製らしい。以前、あんこを自作する和菓子屋は全体の1割程度しかないと雑誌で読んだことがあるから、三笠屋さんは貴重な一店という訳だ。
 餅も旨かったが、お店のおばあちゃんとお嫁さんとも色々話せたのも楽しかった。この貧乏浪人を哀れんでか、お嫁さんがご自宅用のパンを分けてくだすった。さらに、折り畳み傘をロッカーにしまってしまったこの間抜け浪人に、ビニール傘を下さった。何処に行っても親切にして頂けるなぁ。日本は良い国だよ(東北だけかな?まだわからん)。
 ところで、傘が視界にない時点で、おばあちゃんが「けでやる」と言ったのを、東北人でもないのに一発で「(傘を)くれてやる」と理解した私は、東北語学のセンスがあると思う。でもやっぱり津軽弁同士の会話は全く聞き取れない。ネイティブの方々はどういう耳をしてるんだろ・・・

 その後、黄金焼という大判焼のちっちゃいのや、銀だらの照り焼き定食を食べた。今日は贅沢をする日なのだ。でも出費する度にストレスが溜まる、悲しき浮浪者貧乏浪人の性。

 城下町・弘前は文化度が高そうだった。喫茶店やフランス料理店や和菓子店が沢山ある。津軽塗や木工品等の芸術品もある。ねぷた祭りもある。聴く者の魂を揺さぶる津軽三味線もある。郷土料理もある。お土産も、りんご関係、ねぷた関係、歴史関係、魚介類、酒、工芸品等等、今回の旅路の中では弘前が最も充実している。やっぱり、歴史と文化のある町は良いなぁ…。
 なれど、南部浪人のそれがしにとっては、津軽は敵に御座る。迎合はせんぞ!

 晩飯は津軽三味線ライブの店でほっけ定食を食べ、津軽三味線の生演奏を聴いた。旅が終わったら津軽三味線を習うど!
 そして今夜の宿は、夜行バス。一時帰玉(かえたま)。

十八日目 5/23 深浦町~弘前市 (2)

 出発してからちょっと行くと、コンビニ的個人店があったので入ってみると、都合良くカセットガスがバラ売りされていた。カセットガスは大抵3本セットで売っているので、バラ売りしてくれるお店は、荷物を多く持てない私たち旅人にとって大変ありがたい存在なのである。

 そしてコンビニ的個人店から間もなく、「マックスバリュ深浦店」が出現した。神が東北地方を旅する貧乏浪人に遣わした至高のスーパーマーケット、それがマックスバリューである。イオングループのこのスーパー(多分元々は北海道がメインだった?埼玉では見かけたことがない)は、薄利多売を地で行き、各地の零細商店を壊滅させている。東北地方を旅していて、マックスバリューを見かけない日はない。
 食パン2斤、500gのヨーグルト1つ、コロッケ2つ、フライドチキン1つ、小さい野菜ジュース1つで、しめて560円。こりゃあ、個人店なんか壊滅するわ。
 鬼神マックスから少し離れた無人駅で朝昼ご飯をとった(11時くらい)。余った食パンは貴重な携行食だ。

 腹を満たして出発、今日は逆風が酷い。旅に出てから1番の強風だ。辛い、疲れる、腹が立つ、せっかく景色は良いのに楽しくない。今日まで、ただの1度も追い風を経験していない。季節風に逆らって進んでいるのだろうか?
 やっとの思いで、今日のとりあえずの目的地である鰺ヶ沢町に着いたのは15時30分くらい(本日の走行距離40km台)。今日は何処まで行こうか、宿をどうしようか、まだ決められない。とりあえず弘前市方面へ進む事にした。
 国道から県道に入り、進むと「弘前 33km」の標識。今日はここ三日間で最も脚の状態が良いので、逆風さえなければ行けない距離ではない。今日弘前に行っちゃおうか?と冗談っぽく考えた。途中にローソンがあれば、ロッピーで高速バスの空席を調べ、本日空席があれば、いきなり帰玉(かえたま)してしまっても良い。逆風がやめば・・・

 津軽富士・岩木山のふもとの、リンゴ畑が広がる丘陵地帯に入るといつの間にか逆風は止んでいた。あれは海風だったのか何だったのか、よくわからんかった。
 逆風さえなければ、このマッスル浪人本多にとっては、丘陵地帯程度の坂は問題ではない。ちょっとの坂なら立ち漕ぎで乗り切れるし、きつい坂なら押して上れば体を温める良い運動になる(気温は13度くらい?)。糞忌々しい ぎゃ・く・ふ・う!  がなければ、どうにでもなるんだ。ちょっと体力に自信がついた。

 うまいことローソンがあったのでバスを調べてみると、今日の空きはなかった。明日の空きはあるが、弘前から東京まで片道8000円とお高い。という訳で、今日は、弘前のネットカフェで安い高速バスを調べつつ泊まる事にして、明日日中弘前観光をして夜行で帰玉だ。

 20時前に弘前駅に着いた。親切な道端のおばちゃんに教えてもらった地下駐輪場に自転車を置き(1日100円)、駅のコインロッカーに旅の荷物をしまいこんだ(1日500円高いよ)。そして交番でネットカフェへの道を尋ね、ネットカフェに着いたのが21時くらい。
 本日は日曜日で割高な料金だったので、3時間粘って日付をまたいでからちぇっく・いんした。貧乏が悪いんや!!

 今日はよく頑張ったなぁ、ネットカフェ浪人。

十八日目 5/23 深浦町~弘前市 ( 1)

へなし駅は、テントよりかなり眠れた。硬くて体が凝ったが、眠れないよりましだ。
昨日の店のおばちゃんに挨拶しに行き、不老不死温泉に行くので、自転車を置かせて下さいと頼んだ。快諾してくれた。昨日は、不老不死温泉に入れなくて傷ついた心で、駅へのきつい坂を孤独に上ったのだ。

さて、温泉は確かに海に入っている様な感じだった。目の高さに海がある。縁をまたげば海に入れる。漁師さん達から私の貧弱なBODYが丸見えだ。夕方に入ったら最高だろうなぁ…。

優雅に朝風呂を楽しんだ(600円、2食を賄える値段だった)。今日は、とりあえず鰺ヶ沢(あじがさわ)を目指す。5/30に家族で長野県に借りている棚田で田植えがあるので、一時帰玉せねばらならない(かえたま…埼玉県に帰ること。ぺぽぷ辞典)。鰺ヶ沢町の隣の弘前市から東京に高速バスが出ているので、旅に出る前から、それで帰玉するつもりだった。
30日までには日数があるが、天気予報によると、今週は雨が続く様なので、早めに帰玉することをここ数日間想定していた。東京は日本の交通網の中心地なので、何処にいても戻るのには不自由しない。融通が利いて良い。

昨日の朝で米とガスが尽きて、兵糧がない。どこかで仕入れなければならない。

十七日目 5/22 大潟村~青森県深浦町

どんなに体が疲れていても、テントで寝ると、どうしても風や車の音が気になって眠れない。横になってから、ずーっとレム睡眠で寝不足だ。準備撤収に時間がかかるし、テントはいやだ!

しかし、好天に恵まれた。青森県の日本海側は、これまでの道とは一変して美しい。海が綺麗だ。ずっと続く岩礁が旅情を満たす。こりゃ、五能線は人気がある訳だ。北日本の海岸の中では、五能線沿いが圧倒的に美しいのではあるまいか。
私は、東北地方行脚では、青森県のみを楽しみにしていたのだが、やはり実際に来てみると青森県は良い所だ。気候も経済も厳しい土地だろうが、本州の最果てにこそ宿る美しさや文化がある。みちのく(道の奥、道の苦)の魅力だ。

と、まあ、途中まで旅行気分を楽しんではいたものの、十二湖への山道から辛くなった。
白神山地のあたりに「十二湖」という、池が沢山ある景勝地がある。そこの「青池」という池を見に来たのだが、海岸線の国道から山を登らねばならない。結構えぐい坂だ。汗をかきかき、休みながら1キロちょい自転車を押した。
ふもとから十二湖への中継地点に「アオーネ十二湖」というリゾート地があるので、そこに自転車を置いて、更に歩いて登った(一時間後に青池への無料バスも出るらしいが、待ってられるか!体力のついた俺はゆっくり自然を見ながら歩くんだぜ) 。
バスを待てば良かった。青池まで4キロある…今日はもう登り疲れた。もう嫌だ。

で、なんとか青池まで着いた。ああ、真っ青。今まで見たどの池より神秘的だ。池自体が宇宙だ。光が反射してカメラにはおさめられなかったが、肉眼と双眼鏡で堪能した。こんな所で一日中ぼーっとしていたいな。
疲れたのでアオーネまでの下りは無料バスで。そしてアオーネから海岸線への下りは自転車で。最高速度は56キロ!登りがそれだけきつかったということだ。

今日の目標は、黄金崎不老不死温泉で夕日を見ながら日帰り入浴。山形でも秋田でもすすめられた、評判の温泉だ。海の真ん前に露天風呂があるらしい。十二湖から10キロくらい先だ。疲労困憊の私には近い距離ではない。
それでも何とか着いた。温泉までの道は、時速40キロを超える下りだった。タオルを用意し、さあ入ろうと扉へ近づいた。
「平成19年より、午後16時以降の露天風呂への入浴は宿泊のお客様に限らせて頂きます」
………。ここに入るのを励みに頑張ったのに。
2年前の私であれば、いじけてやけくそになり、先へ進んだかもしれないが、素浪人となった今は、少しは根性がついた様で、明日の朝入ってやる、と切り替えた。
不老不死温泉の最寄りである五能線「へなし駅」の近くの売店に入り、おばちゃんと自転車旅や不老不死や寝床や食料について話した。本日の代替温泉は、近くのみちのく温泉、寝床はへなし駅(夏は結構自転車野郎が来て泊まるらしい)、食料は近くに飲食店がないのでおばちゃん店で菓子パン五個。

みちのく温泉もなかなか良い温泉で、夕焼けを堪能できた。
無人のへなし駅舎には一人掛けベンチが4つ並んでおり、丁度私の身長くらいの長さだった。自転車も駅舎に入れられるし、荷物も置けるし、トイレもある。快適な宿だ。
パンを食って、歯を磨いて、山形で買った酒の残りを飲み干して、寝袋に入り横たわった。寝てから一度、ボトンとベンチから落ちた。

十六日目 5/21 大潟村~八峰( はっぽう) 町

足の具合も昨日より良さそうだし、久し振りに途切れることのない睡眠をとれた。宿の自炊設備でご飯を炊いて食べ、ちんたら準備をして11時10分頃出発。
しかし、忌々しい記憶の大潟村から、なかなか出られない。元は湖なので、陸の孤島という感じがする。雨と怪我の島。閉塞感を覚える。やっと「またどうぞ」という看板が見えた。頭の中で、「二度と来るか!!」と罵った。

国道を北上していると、ラーメン屋の前を通った。濃そうなラーメンだ。塩と油をあまり摂っていないので、食べたい…。だが、今の私にはラーメンなどおやつにしかならない。腹を満たすという観点からだと、ラーメンは費用対効果が低い。幸楽苑があれば…
日頃の行いが良いお陰か、能代市の中心地の手前に幸楽苑があった!しかも、「当店限定 ラーメン半額フェア」の旗が風になびいている。入るしかない!!
味噌野菜ラーメン(\490→\245)で塩分と野菜を補給した。国道は景色がつまらなくて旅には向かないが、時として貧乏な旅人を救うこともあるということを学んだ。

八峰町という町に入り、八森港という港を過ぎて、ようやく見られる景色になった。岩と青い海。ここから先が、噂のJR五能線沿い海岸だ。郡山の下宿のおばさんも絶賛していたし、森崎さんの日本一周本に出てきた東北人も、「日本海はここからが良いんだよ」と言っていた。

今日は青森県の手前の、営業期間外のオートキャンプ場をこっそり無料で拝借★テントを張らせてもらった。

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プロフィール

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本多
性別:
男性
職業:
素浪人
自己紹介:
旅烏になり申す。

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